- 「妄想」と「実体験」のあいだに橋をかける
- 1. どんな人に「子連れ仮移住」は向いている?
- 2. 知られていない「区域外就学」と「一時保育」――子どもも一緒に暮らすための仕組み
- 3. 気候が暮らしの質を変える――朝夕に散歩が“戻ってくる”
- 4. 30分圏内に「遊び」がある生活――子どもが飽きない週末動線
- 5. ベストな期間は「2~3か月」――1か月目は“揺れ”、2か月目は“つながり”
- 6. 行政・移住センターのサポート
- 7. 家電に甘やかされない暮らし――不便から“時間の価値”が見える
- 8. 「費用と持ち物」リアルメモ ――ムダを削って楽しみを残す
- 9. 現地で得た“人のあたたかさ”――帰りたくなくなる理由
- 10. 迷うあなたへ――最初の一歩は「問い合わせ」と「2か月の仮決め」
- まとめ――「仮」で終わらない変化が、静かに始まる
「妄想」と「実体験」のあいだに橋をかける
都会の暑さにぐったり。朝も夜も熱気が引かず、子どもを連れて散歩に出る気力すらわかない――そんな夏、私たちは子連れで仮移住に踏み切りました。正直、最初は「移住なんて現実的じゃない」と思っていたし、せいぜい“夏の思い出づくり”くらいのつもり。でも、約2か月暮らしてみてわかったのは、仮移住は妄想と現実のあいだに橋をかける一番やさしい方法だということ。良いところも不便も丸ごと体験したことで、人生の選択肢がぐっと増えました。この記事では、その手触りをごまかさず、子育て世代の親目線で再現性のある手順としてまとめます。
1. どんな人に「子連れ仮移住」は向いている?

- 仕事がリモート中心で、業務の7~8割はオンラインで完結できる
- 育児休暇(産休・育休・時短)を取得できる/取得中の人
- 都会の猛暑や喧騒で疲弊していて、季節だけでも環境を変えたい
- 自然のそばで生活リズムを整え直したい、家族の時間を取り戻したい
- 将来の移住に興味はあるが、いきなり本移住はハードルが高い
最初の一歩としての仮移住は、意思決定のリスクを最小化しつつ、現地の温度感(人、気候、生活コスト、教育環境)を体で理解できます。とくに子連れの場合、親の「行ける気がする」だけでなく子どもの適応を観察できるのが大きい。
2. 知られていない「区域外就学」と「一時保育」――子どもも一緒に暮らすための仕組み
子連れ仮移住で壁になりがちなのが学校・保育の問題。実は、受け入れ自治体や学校と調整すれば、小学生は「区域外就学」、未就学児は「一時保育」の活用で、現地の生活にスムーズに乗れます。
基本の流れ(小学生)
- 仮移住先の教育委員会・学校へ事前相談
- 在籍校(元の学校)とも連絡・調整
- 必要書類の提出(身分・住所・在籍確認など)
- 受け入れ決定後、通学ルールや持ち物などを確認
- 初日は保護者同伴で教室・先生・友だちの雰囲気に慣れる
未就学児(保育園)の一時保育
- 事前に園へ期間・曜日・時間を相談
- 予防接種記録や健康状態の確認
- 慣らし保育を1~3回入れて、親子の不安を軽減
ポイントは、早めの連絡と小さな慣らし。「子どもがここで過ごす“イメージ”」を、入園・登校前に親子で共有しておくと、初動が驚くほどスムーズです。さらに、詳しいことは伊豆市役所の地域づくり課の方が丁寧に教えてくれるので心配ありません。実際に仮移住する3か月前くらいからやりとりを始めれば、十分に間に合います。
ちなみに我が子は、7月から夏休みに入る期間まで「区域外就学」を利用しました。地元の小学生も新しい子が来るということで、温かく迎え入れてくれて、すぐに馴染むことができました!
授業が終わった後も、「待合」というものを利用し16時まで学校にいました。
※待合とは、授業終了後、16時まで無料でみてくれる制度。いわゆる学童的な感じ。名古屋では暑くて外にも出られないが、伊豆ではグラウンドを走り回っていました!
一時保育に関しては最大3日/週預けることは可能。(実際には保育園の事情もあって、そこまで預けることはできなかった)
3. 気候が暮らしの質を変える――朝夕に散歩が“戻ってくる”
日中はさすがに暑いものの、朝と夜は散歩ができる涼しさ。これが生活リズムに直結しました。朝はちょっとした散歩、夜は静けさの中で深呼吸。名古屋に戻った直後に感じた身体のしんどさで、私たちは改めて気づきました。気候は生活の土台であり、睡眠の質や子どもの機嫌、仕事の集中力まで静かに左右します。“暑さからの避難”としての仮移住は、価値があります。

4. 30分圏内に「遊び」がある生活――子どもが飽きない週末動線
仮移住先の拠点から車で30分圏内に、海・川・直売所まで、家族で軽く行ける場所がたくさん。とくに海の透明度は圧倒的で、シュノーケルや磯遊び、夕方の足チャプ程度でも十分満たされる。観光“イベント”ではなく日常の延長のレジャーになるから、コストも体力もかかり過ぎません。「どこに行く?」を考える時間が減り、毎週末の幸福度が一定以上で安定しました。

(他の記事でいろんなところに遊びにいった記事を載せていますので、興味が湧いたら読んでください。)
5. ベストな期間は「2~3か月」――1か月目は“揺れ”、2か月目は“つながり”
- 1か月目:初めての土地・学校・保育・スーパー・病院。小さな不安が次々出てきます。正直、ホームシックもありました。
- 2か月目:慣れが生まれ、地域の人との会話が増える時期。近所の方、先輩移住者、学校の保護者…雑談のなかで暮らしの知恵が集まってくる。不思議と帰りたくなくなる瞬間が訪れます。
- 3か月目:可能ならさらによい。物件探しやさらなる地域との交流。
子連れの仮移住は、最低でも2か月あると、家族の心身が「試す→慣れる→味わう」まで進みやすい。私たちは夏休み(7~8月)に合わせて2か月を選び、学校・仕事・遊びのバランスが取りやすかったです。
6. 行政・移住センターのサポート
仮移住は伊豆市役所や移住情報センター(9izu)が頼りになります。交流イベント、地域イベント、親子で参加できる体験など、情報のハブとして活躍。重要なのは、主体的に一歩踏み出すこと。誘いはあるが強制は一切なし。ほどよい距離感で、必要なときに必要な支援を受けられます。

7. 家電に甘やかされない暮らし――不便から“時間の価値”が見える

名古屋の自宅では食洗機・乾燥機付きドラムが当たり前。仮移住先では手洗い・外干しが基本で、正直、不便でした。
結果的に、便利な都会生活のありがたみも再確認。どの“不便”なら受け入れられて、どの“便利”は手放せないのか、家族の合意形成が進みました。
仮移住住まいに「食洗機」と「乾燥機」があれば最強でしたw
8. 「費用と持ち物」リアルメモ ――ムダを削って楽しみを残す
主な費用科目
- 住居:およそ2,000円/日
- 交通費:ガソリン代など
- 食費
- 体験費:海・施設
節約のコツ
- 食は直売所+自炊で質もコストも最適化
- レジャーは無料~低単価の自然遊びを主軸に
持ち物ミニリスト
- 仕事:PC、延長コード
- 生活:タオル、室内干しグッズ
- 子ども:水遊びセット、学用品の予備、保険証・母子手帳
- 安心:救急セット、普段飲んでいる薬、常備の虫よけ
9. 現地で得た“人のあたたかさ”――帰りたくなくなる理由
2か月目、近所の方が声をかけてくれたり、子どもが「また明日ね」と言える友だちができたり。
先輩移住者からの言葉――
家庭や仕事の調整は大変。でも、新しい生活を想像している“今”の過程を楽しんでくださいね。
この一言で、肩の力が抜けました。仮移住は“決断”ではなく、観察と対話の時間。その豊かさが、心に余白をつくります。
10. 迷うあなたへ――最初の一歩は「問い合わせ」と「2か月の仮決め」
- 伊豆市役所 地域づくり課に、まずメールか電話
- 学校・保育については区域外就学・一時保育の受け入れ可否と必要手続きを確認
- 仕事の会議帯と2か月の仮日程を家族で共有
子連れ仮移住は、やってみるまで不安ですが、やってみると基準が整う。次の夏、あるいは秋。季節はいつでも、あなたの家族のリズムで選べます。
まとめ――「仮」で終わらない変化が、静かに始まる
- 仮移住は、妄想と現実のあいだに橋をかける低リスクな実験
- 子連れでも、区域外就学と一時保育で日常に乗れる
- 期間は2~3か月がベスト。1か月目は揺れ、2か月目はつながり
もともと移住には関心があったものの一歩を踏み出せずにいましたが、思い切って仮移住に挑戦して本当によかったと感じています。環境を変え、地域の方々と交流を重ねる中で、家族の選択肢が確かに増えました。
これからは再び名古屋での日常が始まります。今回得た気づきを携えつつ、次の選択肢も視野に入れながら、暮らしを楽しんでいきます。